ここで、研究会の報告書で、もうひとつピントがはずれていると感じたことを述べよう。それは「事前運動規制との関係」で述べられている事前運動禁止に関する記述である。
報告書では、
「現行の公職選挙法は、選挙の公示または告示の日から選挙の期日の前日まででなければ選挙運動を行うことができないと規定し、事前運動を禁止している」
と記述した上で、議論の中で出された意見を列挙してから、結局、
「したがって、インターネットであっても事前運動規制を維持することは可能であると考えられる」
という結論になっている。
この結論に従うと、選挙運動のためのホームページは、公示又は告示の日まで掲載できないことになる。そして、選挙当日はホームページを削除しなければならないことになるが、さすがにこの点については問題があるとして、
「研究会としては、選挙当日の候補者のホームページの書き換えは禁止するが、前日に書き換えたものをそのまま閲覧できる状態にしておくことは認めるのが適当であるとの結論に至った」
となっている。
このような規制は、ほとんど実効性がなく、抜け駆けされても摘発が難しいという問題があるが、それは後述することにして、何より問題なのは、このような規制を行うと、現職候補が圧倒的に有利という不公平が生じることである。
それは、検索サイトの問題である。
例えば、Yahoo!の場合、「トップ>政治>国会>衆議院>議員」というカテゴリが存在し、現職の衆議院議員のホームページにはリンクが張られている。しかし、当然のことながら、「衆議院議員立候補予定者」などというカテゴリは存在しないから、現職以外の立候補予定者のリンクは存在しない。現職議員以外の人物が、ホームページを通じた政治活動を行っても、相手にされないのである。
ではGoogleの場合はどうか。Googleの場合、ホームページを検索の対象にしてもらいたいと考えた立候補予定者が、自分のホームページのアドレスを登録すれば、そのキーワードをロボットが記憶し、Googleの利用者がキーワードをクリックすれば、表示画面の上位になるという仕組みになっている。
福田神奈川県議会議員のホームページを公開したばかりの頃、議員に当選する前の状態では、「福田紀彦」といったキーワードで検索してもヒットされず、上位に表示されるのは松沢しげふみ衆議院議員(当時)や中田宏横浜市長のホームページであった。
例えば、街頭ポスターは、「○○市の長期計画」などという表示で、「ああ、××さんは、○○市の市長に立候補するんだ」と、市民に連想させることができる。通常の政治活動と選挙事前運動の間で、とてもグレーな戦術だが、このようなことをホームページに応用していても、検索ロボットが市長の選挙を連想するはずがなく、「市長」というキーワードで検索した有権者に、ホームページを見てもらうことはないのである。
このように、現状でも現職が圧倒的に有利な状況で、事前の公開を禁止したら、ますます現職有利になる。公開できなければ検索対象にもならないのである。公開後、検索ロボットに登録を依頼しても、少なくとも1週間はかかる。登録された頃には、選挙が終わってしまうのである。
この不公平の解消も、候補者各々が開設したサーバーを通じて選挙運動をやらせようとしている限り、無理なのである。
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